ある夜、庭を見ながらベランダで涼んでいると、庭のフェンスの向こうに、「シャッ」と横切る黒い影が。

「ああ、猫のお散歩かな」

なんて思って、特に気にも留めませんでした。

すると、その黒い影は、うちの庭のフェンスに「シャッ」と飛び乗りました。

「おいおい、庭にウ○チしないでね~」

と、心の声。

私は実家でずっと何匹も猫を飼っていたので、猫には少し甘いかもしれません。動物全般好きですが。

同時に、猫の習性なども、少しは詳しいです。

ボケーっと猫らしき黒い影を眺めていました。

視線は黒い影に向いているものの、頭の中では別の事を考えていた、とうのが正しいかもしれません。

次の瞬間、思考ともども、黒い影に釘付け!


「ね、猫じゃない・・・」


猫じゃないようなその黒い影は、危な気なく我が家のフェンスの上を歩いています。

そして、お隣にあるビワの木へと向かいます。

ちょうど旬を迎え、美味しそうなビワが実っています。

猫じゃないような黒い影は、ビワが食べたいのか、気に飛び移ろうと、手(前足)を出しています。

この姿・・・


























イタチだ!!























長い胴体。
短い足。
長い尻尾。
動き。

間違いないと確信。

さっきまで別の事を考えていた頭の中は、イタチと判断された黒い影の事で一杯になりました。

「お隣さんに教えた方がいいかな・・・でも夜だし(そんなに早くもない時間帯)」

「確かイタチって結構凶暴だったような・・・」

「ビワが盗れない事に腹を立て、庭に下りてきたらどうしよう」

「そして勝手にパニックになって、うちの網戸を突き破って、お部屋で暴れたらどうしよう」

と、様々な不安が頭の中でグルグルグルグル。

一瞬、物干し竿に手がかかりそうになりました。闘う気か!?

ちょっとした恐怖に抱かれながら、ジーっとヤツを凝視。

もはや、その動きから目が離せません。

「何よ。どうしてよ。何でイタチが出るのよ」

「何しに来たのよ」

「大体どっから来たのよ」

「えさが欲しいのかなあ」

最後だけ、少し優しい気持ちになりそうになりましたが、ヘンな汗が出てきた事に変わりはありません。



そんな勝手な心配をよそに、ヤツは、ビワを諦めたのか、どこかへ行ってしまいました。

良かった!(泣)

すかさずメールをします。

その①

「イタチが出たよ!」
「猫でしょ」

その②

「イタチが出たよ!」
「猫じゃなくて?」

その③

「イタチが出たよ!」
「タヌキじゃないの?」(それはそれで驚きだけど)

とまあ、誰も信じてくれません。


結局、猫かタヌキという事にされてしまいました。

納得いかない私は、数日、「あれはイタチだった・・・」と言い続けました。


「もうわかったよ。イタチでいいよ」

だって!

絶対に猫だと思っている様子アリアリです。

それからも、念仏のように「イタチ・・・」と言い続けました。ネットの画像でも確認しました。やっぱりイタチ。

そして、しつこくも、姉に

「イタチが出たよ」

と言うと、例によって、

「猫じゃなくて?」

「イ・タ・チ」
「ハクビシンじゃないの?」

複雑・・・
猫ではないと信じてはくれたのでしょうが、イタチでもない。ちょっと新しいパターンにどぎまぎ。

暗かったから、白かったかどうかは判別出来なかったし。


誰にも信じてもらえないまま、週末が。

思わずマイクで、「イタチが出ました」って言いそうになりました。

そんな日曜日の朝、ビワじゃない方のお隣のご主人と会いました。

「あのね。信じてもらえないかもしれないけど、この間、イタチが出たの・・・」

すっかり自信喪失。(それでも言うか・・・)

すると、お隣さん、

「あ、そうそう。俺も見たよ。そこ、歩いてたでしょ」



































































とうとう目撃者が!

とっても嬉しい瞬間でした(笑)危うく狼少女(というには熟しすぎですが・・・)になるところでした。

聞けば、他にも数名目撃しているとの事。ハクビシンじゃないかという説もあるようです。

いずれにせよ、ただの猫ではなかったという事が判明♪

役所に駆除依頼を出したという事です。



長いイタチ論争が終わりました。

後日、管理人さんに会ったので、ダメオシのように、

「この間イタチが出たんだよ~」
「え~、猫じゃなくて?」
「うん。何人も見ているから」(強気)
「ほんと~?どこかで飼ってるフェレットが逃げたんじゃないの~?」

新しい・・・


教訓。

人はイタチを信じない。